パラワン島へ

数年前、英語留学でフィリピンのパラワン島に行った時の話である。
短期留学だったので、朝から夕方までびっしり英語漬けの毎日を体験した。

滞在していたホテルに英語学校の事務所があり、朝レッスンの時間になると生徒の部屋に、フィリピン講師が来て1時間弱のクラスを夕方まで何度も行う。
数人の講師が休憩時間を挟んで入れ替わりで来てくれるので、こちらから教室に移動する手間もなく非常にスムーズだった。

講師の中で、フィリピン訛りが少なく頭の回転が速い女性講師Aは笑いのセンスがあって、レッスン中何度も爆笑して楽しかった。

やがて滞在後半期間は、Aに専属で来てもらう事となる。

ホテルの廊下から見える風景

 

オカルトの島

少々話が逸れるが当時フィリピンという国は、バッサバッサと強烈な政策を進めていたデュテルテ大統領就任中で、街から麻薬中毒者も消え、先進的国家に生まれ変わるかという国民からの期待もあった。

だが霊的に見ると、古くから黒魔術が盛んなオカルトの霊に支配された国であり、それは今もそうなのだ。
実際にフィリピンのある島では、現在も黒魔術を使って人を呪ったり、病気を直す事が商売として存在し、観光としても有名だ。

バスの中で呪いをかける男

また、これは女性講師Aの体験談だが、ある時Aはバスに乗っていた。

混んでいてAは吊り革を握り立っていた。
すると隣のイスラム教徒(フィリピンにはイスラム教徒も結構いて、特有の装束を身に着けているのですぐ分かる)が、Aの肩にもたれかかって居眠り(!)し始めた。
最初Aはそれを静かに手で押し返して回避した。が、もう一度その男が寄り掛かって来て、さらにAの肩によだれを垂らして寝始めたと言う。

さすがに若い女性であるAは耐えきれず(誰でもイヤだろう)思い切り体を反らして避けた。
反動で男の体がガクッとなり、よろけて転びそうになった。
その直後、男はギロっと鋭い視線でAを睨み付けながら、ブツブツと唱え、口の前で手を切るような仕草をした。
怖いと思ったがちょうど目的地に着き、Aは急いでバスを降りた。

が、次の瞬間強烈な内臓の痛みに襲われ、Aは動けなくなり、道路にかがみこんでしまったと言う。

Aは「私はご覧の通り現代的な女性で、呪い?そんなもの信じてなかった。
でも私のお父さんがいつも言っていたことを、その時思い出した。
誰かが口元で手を切るような仕草をしたら、絶対に気をつけろと。小さい頃から何度も教えられてた。」

ごく日常の風景の中に、呪いが存在しているというのだ。

良く訓練されたAのクラス

話を戻す。

フィリピンの女性は話好きなタイプが多かったが、講師としてしっかり教育された彼女は、自分が話し過ぎる事を控えて、相手になるべく話させるその「引き」が絶妙で、英語力が(当時は)格段に上がった。

基礎がある程度出来たところで、私の要望に応えるレッスンが増えた。
私はAに、外国人に信仰の話をする機会が多いので、スムーズに自分の証し(Testimony)を伝えたいと要望した。

キリストに救われた経緯となぜ神を受け入れる必要があるかーを英語にしたテキストを彼女に見せて、英語の表現としておかしい所はないか、構文に間違いはないかをチェックしてもらった。
また、実際のシチュエーションを真似て会話もしてみた。

そんな内容の授業を続けているうちに、自然とAから信仰に関する素朴な質問を受けるようになっていった。

「聖書を読むな」カソリックの不思議

Aの家庭はカソリックで、Aも日曜には教会に行くのだ。

ところがここがカソリックの摩訶不思議で、神父と母親に「聖書を読むな」と通読を禁じられており、実際のところ「イエスってどんな人?」状態なのであるーつまり信仰はなく、日本で言うところの「うちは代々○○宗だと思う」とか「正月には神社に行く」という文化的宗教・昔からの伝統行事習慣の意味合いに近い。

カソリックの色々な問題は聞いていたが、こうした現場レベルで遭遇すると、やはり「カソリックは巨大な異端」という認識を強めざる得ない。

さらに日曜の礼拝では、キスしたり抱き合ったりしているカップルがいて、本当に不快なのだと言う。
私は思わず「説教している神父は注意しないのか?」と聞いた。
Aによると、そのような状態はずっと前からであり、誰も注意しないそうだ。

悪霊現象が顕著な母親

神父もおかしいが、母親の話に驚いた。

A曰く、母親は絶えず首にぶら下げている「祈りのチェーンネックレス」を触りながら、一日中祈っているらしい。
と言っても敬虔な祈りと言った風情とは遠い、何やらぶつぶつ言いながら突然大声で怒鳴ったり、奇声を上げるのでAは「怖い」と思っている。

さらに(これはAにとって大きな幸運なのだが)最近プロテスタント教会に通う男性とお付き合いするようになり、彼から「聖書を読んだほうが良い」と勧められ、「私のお母さんにも言って欲しい。何かおかしいのよね」と。
彼をAの家に連れて行ったら、母親が怒って「聖書なんて読むな!私のように祈っていれば良い!」と物を投げて暴れ出したと言う。

私はAに伝えた。

● 聖書は神の聖なる書なので、悪霊が最も嫌う事

●「イエスキリストの御名」によって祈らない、祈れないのは、神以外の霊的存在「悪霊」につながっている可能性が高い

● 正しい信仰によって救われたクリスチャンの彼には「聖霊」が宿っているため、聖霊の光が邪悪な存在を白日の下に晒したので、母親の中にいる悪霊が暴れた事

 

Aは「確かにそうだと思う!」と頷き、同時に(何でこの人はこういう事が分かるのか)と不思議そうな顔で私を見た。

ほどなくAは堰を切ったように色々と質問して来た。
この時から私たちの立場は逆転し、私が教師で彼女が生徒になった。

Qイエスキリストとはどんな存在なの?

「父なる神の子だよ。ライオンの子がライオンであるように、神の子だからイエスご自身も神だよ。」

Q地上に何のために来たの?

「すべての人の罪を贖う生贄として、死ぬために来たんだよ。
私たちみんな罪のない人いないでしょう?罪ある者はそのままでは死んだ後、神の国へ行けないの。地獄に行かないように私たちを聖めるため十字架で贖罪の生贄として死んで、それで終わりじゃなく死を滅ぼして三日目によみがえった神なの。」

Q神が人間を創った話は何に(!)書いてあるの?

「聖書に書いてあるよ。創世記という一番初めの書に。
人間だけでなく、人のために太陽や月宇宙を創られて、生き物たちも与えて下さったの。
そう。人間の先祖は猿じゃない。人間は人間として創られた。
サタンは人間に対する激しい妬みから、進化論を用いた巧妙な嘘を広めた。
神様は人を愛して、ご自身の姿に似たように創られたと書いてあるよ。」

これらを説明すると、特にAは人の創造の御業に心が動いた様子だった。
なんとAは創世記の存在すら初めて知ったと言う。
私はふと「Aはカソリックだから、幼児洗礼しか受けてないよね?」
と聞くと、そうだと言う。

「自分の意思で洗礼を受けていないなら、今私が祈りを導くから、イエスを受け入れる祈りをしましょう。」

Aは素直に従った。

祝福の後に攻撃が来る

クリスチャンなら経験的に分かると思うが、大きな霊的祝福の後にサタン側から嫌がらせが来ることは良くある。
今回も例外ではなかった。

晴れてイエスキリストを人生の主として受け入れ、新しい命に生まれ変わったAだが、その翌朝深刻な様子で同僚講師と話し込んでいるのを見掛けた。

冴えない表情でレッスンのため私の部屋に現れたA。
どうしたのか聞くと、今朝突然片耳が聞こえなくなったと言う。

私はすぐに(ははーん 敵のヤツ、私の言葉を聞くなっていう攻撃か)と察知した。

Aにしたら突然のことで、仕事を辞めようかとすら思い悩んでいると言う。
私はまず「OK、落ち着いて」と言い、

「あなたは絶対に仕事を辞めることにはならない。
これは一時的な事で、悪霊が祝福を汚そうとしてやっている事。
『必ず癒される』と、今私の心に神様が語って下さっているから大丈夫。」

そう説明して、彼女の癒しをその場で祈った。

パラワンの教会へ向かう時起きた奇跡

レッスン後、自分のいるホテルからわずか10分の場所にバプテスト教会があるのを見つけた。
パラワン島に来てからずっと現地で礼拝できる教会はないか探していたら、ようやく見つかったのである。
事前に行ってみると、信徒らしき男性がとても丁寧に、明日の礼拝は10時からですよと教えてくれて、教会内を案内してくれた。

翌朝、教会に向かって歩いていると突然、一台のトライシクル(フィリピン特有の安い乗り物)が私の目の前で止まり、パーンと大きな破裂音がした。

パラワン島のトライシクル

(パンク?何かの爆発なのか?)

すると主から「今すぐAの事を祈れ」と啓示を受けたので、とにかくその場で祈った。

トライシクルはなぜか何事もなかったように、立ち去った。

その後、教会の礼拝に無事出席させてもらい、フィリピンは子供が多い!という事実を目の当たりにして、日本との違い、本当の豊かさとは何だろうと思い巡らせ、満たされた心でホテルに戻った。

癒されたタイミング

Aの事が気になってメッセージを送ると、すぐ返事が来た。

なんと癒されていた。
耳は全く問題ない!と。

いつから聞こえるようになったの?と訊ねると、私が礼拝に出る前、つまり乗り物の爆発音が聞こえ、祈ったタイミングと同時刻だった。

主の御業みわざは時にかなって美しい

今回の出来事は、非常に暗示的霊の戦いだったと聖霊に教えられたが、上手く説明するのは難しい。

わざわざ私の前に乗り物が止まり、爆発音がしたのは、主がAの耳を塞いでいる悪霊の仕業を打ち砕き、聞こえるようにした霊的な啓示音だった。
私のような小さな者の祈りを用いて、Aを癒す奇跡を発動して下さり、主に信仰を励まされた。

その後、癒されたAは聖書の「創世記」から毎日読んで学んでいると言う。
さらに妹にもイエス様を伝道し、一緒に聖書勉強しているそうだ。
「創世記が面白い!聖書が楽しい」とうれしそうな顔で語ってくれた。

かくして私の英語留学は、異国の島での伝道旅行という祝福に変えられた。

 

「あなたの御名はあなたの敵に知られ、
国々は御前で震えるでしょう。
私たちが予想もしなかった恐ろしい事を
あなたが行われるとき、
あなたが降りて来られると、
山々は御前で揺れ動くでしょう。

神を待ち望む者のために、
このようにしてくださる神は、
あなた以外にとこしえから聞いたこともなく、
耳にしたこともなく、目で見たこともありません。」

(イザヤ64:2-4)